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しかし「対象を限定して導入したい」が地方自治体で13団体(41.9%)、港湾局が1団体(50.0%)、建設局が2団体(28.6%)、また「導入したいが課題の解決が必要」が地方自治体で12団体(38.7%)、港湾局が1団体(50.0%)、建設局が2団体(28.6%)と地方自治体と港湾局では、日本の実状に適したミチゲーションが必要とされていることがわかる。
全団体をみると「対象を限定して導入したい」「導入したいが課題の解決が必要」と回答しているのは、31団体(77.5%)と高い値を示した。また「沿岸域全般に広く導入したい」が9団体(22.5%)にすぎなかった。

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Fig-6.The introduction of Mitigation System

この理由(table-5.)として「自然環境への影響が懸念される場合」が3件、「希少種生物の生息地」が2件、「逆に自然の残る地域での適用は疑問」が2件、といったミチゲーションの対象を限定する意見や「制度として確立されていないためコストがかかる」が13件、「地域住民の理解が必要」が5件といった現実的な意見があげられ、関係団体のミチゲーションに対する関心の高さがうかがえた。
5-3. 現在の環境創造事業・技術の把握
回収されたアンケート調査結果より「海洋環境・生物に配慮した事業」の内容を調べると、防波堤が3件、浚渫、覆砂が7件、護岸が4件、人工漁礁が2件、人工干潟が2件、藻場が3件、その他5件、合計34件の回答があった。これらを目的・工法別に分類を試みた。その結果(table-6.)、防波堤や浚渫、覆砂、人工護岸といった従来からある工法に環境保全の技術を付け加えた工法であることがわかった。
目的別に分類すると、水質・底質の改善や海水交換を目的とした事業では、防波堤や浚渫、覆砂の工法が採用され、自浄能力の回復と強化や、生態系の回復を目的にした事業では、緩傾斜護岸や人工海浜、人工干潟・浅場等の工法が採用され、新たに海洋環境を創造する技術が用いられている。
5-4. 総括
関係省庁の取り組みのヒアリング調査より、日本では公共事業を中心に開発行為と自然環境への影響の低減や最小化とともに代償行為を含む海域毎の自然環境に応じた影響を質・量ともに維持・復元していく手法がとられるのではないかと考察される。
しかし、どのようなミチゲーションが制度化されるにしろ海域・湾域単位での省庁間の協力体制か必要であり、これは重要な課題になると思われる。
また日本の現時点での沿岸域整備事業の目的は、ほとんどが国土保全や利用調整であるか、計画段階・着工段階の事業の中には「海域環境・生物に配慮した事業」も増加する傾向にあり、環境保護・創造に対する認識が高まっている。さらにミチゲーションの重要性についても十分理解されている。
しかし、まだ制度が確立されていないため、様々な課題(コスト、地域住民の理解、自然環境の残る地域での適用は疑問)があげられた。日本独自の課題を解決した制度か確立されれば、環境に配慮された事業が増加するものと思われる。
海洋環境創造技術については、現在の環境創造技術は、従来の工法に「環境・生物に配慮された工法(緩

Table-5. Obstacles to Introduce Mitigation System

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